Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
その時、治療に当たってくれていた医師が、処置室から出てきた。明るい表情ではないので、みのりは緊張を強める。
「…あの、当然のことでしょうが、全く検診を受けていないようなので、特に胎児の状態がよく分からないんです。ちなみに、いつごろ妊娠したか聞いてますか?」
そう言われても、みのりも今日初めて妊娠しているのを知ったくらいなので、いつ妊娠して今は何週目くらいなのか、皆目見当もつかなかった。
多分、クラス担任も、両親も同じだろう。吉長は友達にも言わず、一人でこの悩みを抱えて今日まで来てしまっていたらしい。
「…すみません。知らないんです。」
みのりは目を伏せて、首を横に振った。
「超音波検査をしたところ、常位胎盤早期剥離になっていて、帝王切開をする必要があると思われます。でも、この病院では胎児に異常があった場合に対処ができないんで、それができる病院に移ってもらいますが、よろしいでしょうか?」
今度は、みのりの目の前が真っ暗になった。
ここでどうにかしてもらえると思っていたのに、転院せねばならないとは。それほど状況は深刻だということだ。