Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 だけど、これまで検診に一度も行ったことがないので、赤ちゃんが健康に育っているのか確認が取れていない。また、正確な妊娠期間が判らないので、取り出した赤ちゃんが未熟の恐れもある。


 みのりは今の吉長の状況を、そのように到着した教頭とクラス担任に説明した。

 一人で対処する状況ではなくなって、みのりはちょっとホッとしたが、吉長の手術はまだ終わっておらず、張りつめた気持ちは変わることがなかった。


 そうしている内に、吉長の両親も駆けつけて、もう一度、みのりは状況を説明する。
 娘が知らない間に妊娠をしていた上に、命の危険も伴うような状況になってしまっていることに、両親とも相当な衝撃を受けているようだった。
 呆然としているような表情は、かろうじて事実のみを認識しているだけのようで、現実を受け入れられているわけではないようだ。


 みのり自身も、真面目な生徒が多い芳野高校の中でも品行方正な生徒ばかりの筝曲部の子が、まさかこんな事件を起こしてしまうなんて、想像さえしたこともなく、衝撃を隠せなかった。


「吉長さんは、あんな体で辛かったでしょうに、大会では1年生を引っ張って、立派に演奏してくれました。」


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