Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
この決勝戦に勝てば、ラグビー部に入部した時から目標に掲げてきた花園出場だ。高校生ラガーマンならば、誰もがここを目指す夢の舞台だ。
でも、都留山高校は20年以上も連続出場を果たしている、県内では常勝チームで、ここに勝つためにはどんな戦略でもってどんなふうに闘えばいいのか、遼太郎は皆目見当もつかなかった。
それほど都留山高校は、遼太郎をはじめ他の芳野高校のラグビー部員にとって脅威だった。
現に6月の県の体育大会の時に、惨敗を喫している。62対8という無様な負け方が、遼太郎の中にトラウマのように巣食っていて、遼太郎の自信を儚く脆いものにした。
でも、まだ試合は始まってもいない。
花園への夢も、まだ繋がっている。試合までに出来ることが、まだあるはずだ。
――やってみてもないのに無理かも…なんて、スポーツマンとは思えない…。
部活が終わって、自転車に乗って帰途につきながら、かつてみのりにそんなふうに言われたことを、遼太郎は思い出していた。
こうやって考え事をしていても、いつの間にか遼太郎の意識はみのりへと帰着する。それでなくても、みのりが箏曲部の引率をした今日は、会えていないこともあって恋しさはひとしおだった。