Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
詮索したい気持ちはもちろんあったが、遼太郎はこれ以上泣かせたくないと思った。
前々回の試合の時、みのりがしてくれたように、今度は遼太郎がみのりを抱きしめて、その胸で涙を受け止めてあげたかった。
しかし、遼太郎はそのまま身動き一つせず、ハンドルを握る手に力を込め、懐に抱きしめてしまいたい衝動と必死に闘った。
しばらくして、みのりは気持ちを落ち着けるように大きな息を吐き、顔を上げた。タオルを胸に抱きしめて、もう一つ大きな息を吐いた。
「ごめんね、狩野くん…。私…」
しかし、心の内を打ち明けようとすると、また大きな瞳から涙が零れ落ちる。
遼太郎は何か他の話題にして、なんだか大変だったと思われる今日の出来事から、みのりの気持ちを逸らせる必要があると感じた。
「先生、どうやって帰るんですか?」
何もなかったかのように、遼太郎が問いかける。
みのりは涙の残る目を、遼太郎へ向けた。そして、一息ついてから、
「……うん、学校までは歩き。学校に車置いてあるから、それからは車だけど。」
と、なんとか普段の感じで答えることができた。
「先生、そんな格好で寒くないですか?」
遼太郎は再び問いかけながら、もと来た道、学校方面へ自転車を向ける。