Rhapsody in Love 〜約束の場所〜




「うん、さすがに夜はこれじゃ寒いね。」


 みのりも答えながら、歩き始める。

 日のあるうちに帰れるはずだったので、防寒用の上着は持って来ていなかった。薄いブラウスに薄手のニットというみのりは、寒そうに身を縮める。


 遼太郎はどうにかしてあげたかったが、防寒ジャンパーなどは持っていないし、さすがに自分の学生服を貸すわけにもいかず、思案に暮れた。


「狩野くんのおうちはどこだっけ?」


 今度はみのりの方から言葉をかける。


「うちは、田島町です。」


「あれ?田島ならあっちから帰った方が近いんじゃない?」


と、みのりは振り返ってコンビニの向こう側を指差す。


「俺の家は、こっちからでも帰れるんで…。」


 ニコリと遼太郎は笑って、みのりと並んで歩くように自転車のペダルを踏んだ。


「あの、先生。面接の資料ありがとうございました。」


 そう言えば、資料を澄子に渡してから遼太郎に会っていない。いろんなことがありすぎたせいか、随分前のことのように、みのりは思い出した。



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