Rhapsody in Love 〜約束の場所〜

18 決勝戦



 晩秋の空気は少し肌寒く、空もどんよりと雲が覆っていた。

 今日の観戦は、寒いかもしれない。
 かと言ってダウンコートを着るまでもなく、みのりは仕舞い込んでいたトレンチコートを引っ張り出して、それを羽織って出かけた。


 澄子とともに県営ラグビー場へと向かい、早めに到着すると、すでにラグビー部員たちは、グラウンドの端の方で身体を動かし、試合への準備をしていた。


 3年部の澄子は、みのりが日本史で担当している3人以外にも知っているレギュラー選手が多い。ロックの下平は世界史選択者で、澄子が担任しているもう一人のラグビー部員だ。


「もっと前の試合から、応援に来てあげればよかったなぁ……。」


 澄子がそうこぼすと、みのりは澄子を見遣って微笑んだ。


「そうは言っても、澄ちゃんは3年部で、私と違って忙しかったでしょ?しょうがないよ。」

「まあ、確かに忙しかったけど。忙しいのはみのりさんだって、同じなのに…。」


 澄子は肩をすくめた。要は、気があるかないかの違いだということだ。
 毎週、3年生のラグビー部員たちにとって「負ければ最後」の試合をしていたのに、職員の中で応援に来ていたのは、みのりくらいのものだった。


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