Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 グラウンドの芝は、まだ冬芝になる前で、肌寒くなってもまだ緑を保っている。きれいに整備されたこのグラウンドには、間もなく決勝戦が始まる静粛な空気と、試合の熱気の予感が漂っていた。


 二人は歩いて、階段席のあるメインスタンドとは反対側の、芝生スタンドの方へと移動した。こちらの方が低い位置から観戦することができるからだ。

 芳野高校の特に用事のなかった3年部の教員や、その他有志の教員たち、ラグビー部員たちの保護者などが、既に集まり始めている。

 試合会場になっているこのグラウンドは芳野から遠いので、さすがに応援の生徒の数は少ない。それでも、憧れの先輩の勇姿を観たい女子生徒や友達の応援に来た男子生徒の姿を、ちらほらと見ることができた。


 遠くでコンタクトバッグを使った練習をしていた部員たちの中でも、にょっきりと頭一つとび出している二俣が、手を振りながら大声で叫ぶ。


「おぉ―――い!みのり、ちゃーん!」


 身体は一番大きいくせに、一番無邪気なのが二俣だ。まるで子犬が飼い主を見つけたみたいに、尻尾を振る。


 呼ばれたみのりに周囲の注目が集まり、ギクリとみのりは肩をすくめた。声がした方を見ると、二俣の側には遼太郎もいた。


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