Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎の表情までは判らないが、腰に手を当てこちらを向いているのは判る。いつもならば遼太郎と視線を合わせるだけで、意思の疎通ができるけれど、この遠さではそれは無理だった。
みのりは両足を踏ん張り、口の横に両手を当てた。
「おお――い!頑張ってね―――っ!!」
二俣に負けない授業で培った大声を、みのりもラグビー部員たちに放ち、大きく両腕を振った。
コンタクトバッグに向かって並んでいたラグビー部員たちは、これに反応し、
「おお―――――っ!!」
と、一斉に野太い声を上げ、みのりと同じように腕を振った。
この反応に驚いたのは、隣にいた澄子だ。みのりとラグビー部員たちを交互に見遣って、目を丸くする。
「すごい!みのりさん。さすが、連帯感が生まれてる!」
みのり自身も、日本史選択の3人はともかく、他のラグビー部員たちとの間に連帯感があるなんて、この時まで自覚していなかった。
きっと応援に通ううちに、そして遼太郎を通して、いつの間にか生まれていたんだろうと、みのりは心が暖かくなった。
本当は遼太郎に直接言葉をかけたかったが、昨日のあのやり取りで、自分の心は伝わっているだろう。
あの時の遼太郎の表情を思い出して、みのりはそれを信じていた。