Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
10分が経過し、芳野の選手たちが肩で息をし始めたころ、自陣のゴールライン際のモールを押し切られ、ついにトライを決められてしまった。
やはりモールなどの密集での押し合いになると、体の大きさの差は歴然とする。
ああ――――――っ…
芳野側の応援席から、ため息のような落胆の声が起こる。
予想していたこととはいえ、こんな試合を強いられる芳野の選手たちの気持ちを思いやって、みのりは心が押しつぶされそうだった。
コンバージョンのゴールキックをする間に、1年生たちは素早くインゴールへとスクイズボトルを運び、選手たちは水分を補給する。
そして、仕切り直しの芳野側のキックオフ。選手たちの表情まではよく見えないが、自分たちのすべきことを冷静に確実にしようという意気が伝わってくる。
何と言っているのかは聞き取れないが、遼太郎の大きな声が聞こえてくる。その真剣な響きに、みのりの心は震えた。
こんなに苦しい戦況の中、遼太郎は何を思っているのだろう。
いつも試合の時には人が変わったように鋭い顔つきになり、スタンドオフの仕事を全うする遼太郎だが、都留山高校相手にどういう戦術を考えているのだろう。