Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
もちろん都留山との試合だから、勝算は低いと思っていた。けれども花園出場を果たし、そして大学にも合格したら告白しようと、いつしか遼太郎は心のどこかで決めていた。
遼太郎が心に描く〝いい男〟の条件とは、この二つが達成できてのものだった。〝いい男〟に成れていなければ、自信を持ってみのりに告白などできない。
今の遼太郎には、目の前にいるみのりを直視する自信さえ持てなかった。
「……狩野くん。顔、上げなよ。」
少し離れたところから、みのりがそっと柔らかく語りかける。
声をかけられた遼太郎は、目を伏せたままピクリと肩を揺らす。
「そして、胸張って。」
さらに優しく言葉をかけられて、遼太郎は勇気を振り絞って顔を上げた。みのりの言うように、胸を張ることは出来なかったけれど、視線を合わせることは出来た。
みのりの目の周りに、泣いた痕跡が認められる。負け試合を見て、みのりが泣いたに違いないと思った遼太郎は、情けなさにくちびるを噛んだ。
みのりはそっと首をかしげて、遼太郎の様子を見守っている。
いつもにもまして優しげで深いみのりの眼差しに、遼太郎は怯みそうになったが、見つめ返して口を開いた。