Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「先生…、俺。いい男になれなかった……。」
闘いに敗れてしまった遼太郎の悲痛な表情は、みのりの遼太郎を想って腫れ上がった心に爪を立てた。
あまりの愛おしさに涙が込み上げ、駆け寄って行って抱きしめたい衝動に駆られる。
その衝動を抑え込むように、みのりは胸のところで固く両手を握った。
「狩野くんは…、もうとっくの昔にいい男だよ。」
みのりは涙を堪えて、精一杯笑顔を見せて言った。
「いい男じゃなかったら、今日みたいな試合はできなかったと思う。勝ち負けなんて関係なく、すごくいい試合だったし…。いい男じゃなかったら、あんなドロップゴールは決められないと思う。私、感動しちゃって、涙が止まらなかった。」
そう言う内にも、みのりの目からは再びポロポロと涙が零れる。
それは遼太郎を想って堪えられなくなった涙だったが、みのりはそう言って言い訳した。
――…それに、あんまりいい男になってしまったから、あなたに恋してしまったわ…。
遼太郎を目の前にして、自分の想いを改めて自覚して、胸の痛みに耐えるように目を閉じる。
その瞬間、みのりの目から零れ落ちる涙を、遼太郎は黙って見つめた。