Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「それに、なんか私、いつもこうやって狩野くんに顔を拭いてもらってる気がするわ。」
自嘲気味にみのりが微笑むと、遼太郎はまだ寂しさを漂わせながら、みのりを見下ろして笑顔になってくれた。
その笑顔を見て、みのりはキューッと自分の胸が切なく締め付けられるのを感じた。
これまで幾度となくこの感覚を経験していたのは、それは全て遼太郎に恋していたからだったと、今やっと分かった。
胸が激しく鼓動を打ち始め、息が苦しくなって、思わず奥歯を噛みしめた。
「…それじゃ、外で澄ちゃんが待ってるから、もう行くね。」
ずっと遼太郎の側にいたい気もするけれども、今はあまり長く近くにいると苦しくなるので、早くここから逃げ出したい気持ちもあった。
遼太郎が頷くと、みのりも頷いて視線を残しながら歩き出した。前を向いた瞬間、後ろ髪を引かれるように、もう一度振り返る。
「狩野くん、胸張って。」
遼太郎はみのりのその言葉を素直に受けて、スッと姿勢を正して胸を張った。
「そう。」
みのりは満足したようにそう言って、満面の笑みをたたえた。