Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 遼太郎は、みのりが姿を消した玄関ロビーの方をしばらく見ていたが、唇を引き結んで、意を決して二俣の方へと歩いて行った。


「ふっくん。胸張れよ。」


 遼太郎が、うな垂れる二俣の背中に声をかけると、二俣は涙と鼻水でぐしょぐしょになった顔を上げた。みのりのタオルハンカチも、もうびしょびしょになっている。

 二俣は遼太郎の顔をまじまじと見上げると、ようやく頷いて立ち上がった。そして、拳を握って胸を張る。


「よし!円陣組むぞ!!」


 芳野の選手たちに、キャプテン二俣は声をかける。

 選手たちが集まり円くなって肩を組むと、試合の直前にそうするように、頭を寄せ合って大きな声をかけた。



 みのりのいた競技場の外まで、その掛け声は響いて来た。みのりは競技場の方を振り向いて安心したように微笑すると、澄子の車に乗り込んだ。





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