Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎はみのりとの特別な絆のようなものを感じていて、それをみのりと共有できていると思っていた。
それなのに、みのりの遼太郎に対する態度は、大勢いる生徒の中の一人としてのものだった。個別指導においても、他に指導を受けている工藤などと何ら変わりがない。
悶々と物思いに耽りながらも、遼太郎は板書も写さずに頬杖をついて、みのりを見つめる。
教壇の上を右へ左へ動くみのりが教壇の際に立つと、物思いからハッと我に返って、みのりがそこから落ちてしまうんではないかと、気が気ではなくなる。
実際、みのりはその30cmほどの教壇を踏み外して、何度も転びそうになったことがあった。
授業の内容は、江戸時代まで下がり、金は計数貨幣、銀は秤量貨幣だということを、みのりは説明する。
さらに銭のことになり、その換算率が政治の景気対策によって変えられていくという、教科書にはない内容にまでおよび、実際の古文書から抜粋してきた資料をもとに換算をしてみる演習がプリントにはあった。