Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「どう?すごく難しいでしょ?計算機がないとちょっときついよね。だけど、これが出来ないと当時は商人としてやっていけなかったのよね。だから、『読み、書き、そろばん』だけは習得できるように、小さいころから寺子屋へ通ってたりしたの。それに、日本の算術というのは本当にすごくって、『和算』と言われたんだけど…。」


と、みのりは「和算」と板書する。


「江戸時代の和算の大家っていえば、誰だっけ?白濱くん、分かる?」


「ええっ…!?」


 いきなり当てられた最前列の白濱は、飛び上がって目を白黒させた。


「ちょっと難しいか、分かんない?それじゃ、日高さんは?」


 白濱の後ろの席のこの日高は、結構出来る子で、指定校推薦で早稲田への進学が決まっている。だが、この日高も首を横に振る。


「じゃあ、吉竹くん。」


 吉竹は2月に本試験を控えており、目下みのりとの個別指導で日本史の特訓中だ。
 吉竹は眉間に皺を寄せ、渋い顔で首をひねる。みのりはチョークを握りしめて、吉竹と一緒に渋い顔をした。


「…吉竹くーん。昨日やった演習で出てたじゃないの~。それじゃあ……」


と、みのりは順に、縦一列指名していったが、誰もみのりの質問に答えられなかった。
 この体たらくに、みのりは手のひらを上に向けて肩をすくめる。


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