Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 それが遼太郎の心に少し影を落とした。何かが心にひっかかり、ざわめいてくる。
 みのりからされる質問に対してさえ、上の空になってしまいそうになった頃、時刻が迫ってこの日の個別指導を終える時が来た。


 二人で机を元通りに戻しながら、


「それじゃ、明日は私が出張でいないから、金曜日に…。」


と、みのりが言いかけた時、遼太郎がそれを遮った。


「あの、先生。金曜日は入試の前日だから、公欠をもらって東京に発つんです。」


 遼太郎の言葉に、みのりの表情が固まった。


「え…!?それじゃ、個別指導は今日で終わりってこと?」


「…そうなります。」


 遼太郎がそう答えても、思いもよらなかったことを聞かされたようで、情報を処理する間、みのりの表情は変わらなかった。


――今日で終わり……。


 みのりのその言葉に、遼太郎の心がチクンと疼いた。

 みのりとこうやって朝のひと時を過ごせるのも、本当に今日で終わりなのだ。
 寂しさと何とも言いようのない切なさが喉元までこみ上げてきて、遼太郎はゴクリと唾を呑み込んだ。


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