Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 職員全員が起立し、朝礼が始まるときに、みのりは自分の席にたどり着いた。
 礼をして座り、教頭が朝礼を進める間、みのりは机に肘をつき、うつむいて、平常心を取り戻すのに必死だった。


 その日の放課後は、進路指導主任が実戦に即した面接指導をしてくれたのだが、遼太郎はその時も集中出来ずに精彩を欠いていた。

 近くにいるにもかかわらず、遠くに感じてしまうみのりのことが、ずっと遼太郎の頭の中を占領していた。
 4ヶ月も続けてきたみのりとの個別指導も、何の感慨を伴うこともなく終わってしまい、どうしようもない虚無感が遼太郎を襲っていた。


「狩野くんや、大丈夫かね。面接指導も仲松さんに任せてたけど、仲松さんも研究授業をひかえてて忙しいだろうから、十分指導が出来なかったのかね~。」


 進路指導主任が渋い顔をしたので、遼太郎は即座にその言葉を打ち消した。


「いえ、仲松先生は必要なことはきちんと指導して下さいました。僕が言われたことを実践できてないだけです。」


 自分のせいで、みのりの教師としての資質を疑われてはならない。自分の不甲斐なさに、遼太郎は苛立って歯ぎしりした。

 入試までに、もうみのりと言葉を交わすことは難しいだろうが、なんとしても平常心を取り戻さないといけない。


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