Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 この校長は、去年芳野高校に着任していたのだが、直接言葉を交わすのは遼太郎にとってこれが初めてだった。

 校長というにはまだ若いという雰囲気で、細身で小柄な紳士は見るからに優しげだったが、いつも体育館のステージ上で話す姿しか見ていなかった遼太郎にとって、とても遠い存在だった。

 遼太郎はソファに浅く腰掛け、大腿の上に両手を軽く握って載せる。


「今度の土曜に法南大学の推薦入試があるらしいですね。どうして、その大学を受験しようと思ったのですか?」


 いきなりの質問に、遼太郎は目を瞬かせて息を呑んだ。自分の中の思考を総動員して、回答を考える。


「はい。法南大学は大学の中ではいち早く環境学部を設置し、実績もあるので志望しました。現代社会の授業で教わったことや日々のニュースを見る中で、これからの人間と環境とのかかわり方について興味を持ち、特に自然エネルギーについて深く勉強したいと思っています。大学では、そのことをはじめ環境について色んなことを専門的に勉強し、自分なりのテーマを見つけて研究していきたいと思っています。」


 みのりから言われていた、『これとこれとこれは言いたいということを、項目立てして覚えておく』ということを活かして、何とか答えることができた。


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