Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
ソファの向かいに座った校長は、少し笑みを浮かべて頷いた。
「志望理由はしっかり考えているようですね。それでは狩野くんが高校生活の中で、一番心に残っていることは何ですか?」
先ほどの問いかけといい、面接における典型的な質問をされて、
――……こ、これは、模擬面接だ……!
と、遼太郎は確信して、緊張で唇を湿らせた。
「最近のことなんですが、ラグビー部の活動で、花園予選の決勝戦まで勝ち進めたことです。仲間たちと信頼関係も築け、私の高校生活の中で、一番心に残っている大事な出来事です。」
みのりとの個別指導の中で思い描いていた質問に、思い通りの回答ができたことで、遼太郎の肝は据わってきた。
しかし、
「ラグビー部の花園予選での快進撃は、目を見張るものがありましたね。去年と比べてどこが違うのでしょう。狩野くんはどう思いますか?」
と、校長の個人的な興味からの質問だろうか、いきなり想定していない質問をされ、遼太郎の思考も体も固まった。
目を瞬かせ、しばし沈黙し唇を噛んで、必死に思考を再起動する。
「去年と比べて、個々の選手がよりその特性を活かしてプレー出来たことが大きいと思います。活かされた特性が一つのチームに寄り集まり協力しあったときに、思いもよらないほどの力が発揮できて、勝ち進むことが出来たと思います。」