Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
これまで他にも何人もの生徒が推薦入試を受けているが、校長が模擬面接をしてくれたというのは聞いたことがない。昨日のように、進路指導主任や学年主任が本番直前にちょこちょこっとしてくれる程度だ。
模擬面接が終わり、校長が激励の言葉をかけてくれた後で、遼太郎はその疑問を思い切って校長へと投げかけてみた。
その疑問に、校長は目を丸くして、
「仲松先生に頼まれたんです。」
と、肩をすくめた。
「仲松先生が…?」
みのりの名前を聞いた途端、渇ききっていた遼太郎の心に、温かく甘い水が沁み透って満ちていくのが分かった。
「今日は初任者研修でいなくて君の指導ができないから、私にお願いできないかと昨日頼みに来たんだよ。私も仲松先生にはいろいろと頼みごとをしてお世話になっているから、これくらいお安い御用なんだけどね。」
にっこり笑う校長の表情に、みのりとの信頼関係を見て取った遼太郎は、みのりという人間の奥深さを改めて思い知った。
――先生に、いろいろ頼みごとって何だろう…。
と、みのりのことは何でも気になる遼太郎だったが、まさか校長に対していろいろと詮索するなんて恐れ多いので、そのまま丁寧に模擬面接のお礼を述べるだけにとどめておいた。