Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
一礼してて校長室を出たときには、なんだか雲の間をふわふわと歩いているような感覚だった。
昨日の進路指導主任との模擬面接は散々だった遼太郎だが、今日は手ごたえを実感できた。
それに、昨日もそっけなかったみのりが、あの最後の個別指導の後、校長へ直々に自分のことを頼みに行ってくれた…。
自分と面と向かっていない時でも、みのりが自分のことを考えていてくれていたということだ。そのことが遼太郎を力強く後押しした。
自転車置き場まで歩いて行ったときには、ひとまず心の落ち着きを取り戻して、いつもラグビーの試合に臨むときのような心境になっていた。
「――よし…!」
遼太郎は、ひらりと自転車に飛び乗ると、力強くペダルを踏む。これから帰って、明日東京へ発つ準備をしなければならなかった。
初任者研修から直接帰宅したみのりは、玄関ドアの郵便受けに定形外の郵便物が入っているのに気が付いた。
通販のカタログ等ではないことは一目で判るそれを、手に取ってみる。
「…あっ!」
筆で書かれたみのりの名前の筆跡に見覚えがあった。
裏返して見ると思った通り、「仲松隆生」、みのりの父親の名前があった。