Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 居間のローテーブルまで持って来て、大きな封筒を開いてみる。中からはビニール袋に入れられた幾つものお守りと、

『遅れて申し訳ない。』

と一言書かれた便箋が出てきた。


「…もう、お父さん。遅いよー…。」


 みのりはそう呟いて、ため息をついた。


 これは、みのりの実家であるお寺のお守り。もう1ヶ月も前に、みのりが隆生に頼んでいたもので、花園予選に臨むラグビー部員たちや、推薦入試を受験する生徒たちへ渡そうと思っていた。

 でも、花園予選はもう終わってしまい、3年1組の推薦入試を受ける生徒たちの大半は、既に合格と言う結果を受け取っている。


 だけど、遼太郎は…。
 遼太郎の推薦入試は、まだ終わっていない。

 明日の朝出発の予定なので、まだ今日は家にいるはずだ。時刻は6時過ぎ。これから渡せるだろうか…?

 みのりはバッグから携帯電話を取り出して、遼太郎へメールを打ってみることにした。


『狩野くん、もうお家へ帰ってるよね?狩野くんに渡したいものがあるんだけど、どこかお家の近くの分かりやすい所まで出てきてもらえるかな?』


 送信した後、みのりは着替えもせずに落ち着かなげに床に正座をし、返信を待った。


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