Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
『県道沿いのコンビニね、分かりました。これから出るので、10分か15分くらいで着くと思います。急がなくていいので、気を付けて来てくださいね。』
みのりはそう送信して、携帯電話をバッグに押し込んで、脱兎のごとく駆けだした。
パンプスを履き玄関に鍵をして走りだした時、肝心なものを忘れていることに気が付き、また鍵を開けて中へと戻る。――渡したいものを忘れてどうするのだろう。
みのりはあたふたと車に乗り込んでハンドルを握ると、運転するために深く一息ついて、焦った気持ちをひとまず宥めた。
遼太郎は取るものもとりあえずコートを羽織ると、家の者にどこに行くとも告げずに自転車に飛び乗った。
「急がなくていい」と言われても、体が勝手に急いでしまう。メールをもらっただけでも心が歓喜で飛び跳ねているのに、学校でないところで個人的にみのりに会えるのだから、体中の血が沸き立ってくる。
まるで、初めてのデートの待ち合わせに行くような感覚だ。
コンビニに着くと、まだみのりは来ていなかった。駐車場の脇に自転車を停めて、その場に佇んでみのりを待つ。
いつもと変わらない雰囲気のコンビニには、芳野高校の生徒が何人か出入りしていくのが認められた。芳野高校の女子生徒数人が、コンビニの脇でたむろして歓談している。