Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 それとも、明日発つ準備をしている忙しいときに呼び出されて、遼太郎にとっては迷惑だったのかもしれない。

 早く用事を済まして、早く帰してあげようと、みのりはお守りが入ったジップ袋を差し出した。


「実はこれ、お守りなんだけど。狩野くんの入試のお役にたてて。」


 受け取った遼太郎は、それを見て固まった。


「え!?……お守り……?」


 袋の中に見えるのは、使い捨てのマスクやカイロ、お守りに見えない物ばかりだ。


「あ!あの、私、余計なものも入れちゃって…。その中の封筒に入ってるの。うちのお寺のお守り…。」


 真っ赤になって、みのりが説明する。そう言われてよく見てみると、「御守り」と書かれた封筒が入っていた。


「うちのお寺って…?」


 お守りを確かめてから、遼太郎は目を上げてみのりへと視線を移した。
 みのりはきまり悪そうに、再び肩をすくめる。


「私の実家はお寺なの。花園の予選の前に渡したいと思って、うちの父に頼んでたんだけど、忘れてたんだろうね。今日アパートへ帰ってみたら、やっと届いてたのよ。」


 これはちょっと、遼太郎にとっては衝撃的な事実だった。

 そう言えば、以前みのりが『うちの家は特殊だ』と言っていたことを思い出した。


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