Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「…最後の個別指導の時に、直前の対策が出来なかったことが気になってたからね。それで、一番適任だって思ったのが、校長先生だったってわけ。狩野くんのために、恐れ多いけど校長先生までこき使っちゃったわ。」
みのりは肩を上げて舌をちょっと出し、おどけた表情でそう言った。その表情にほだされて、遼太郎も顔をほころばせる。
「仲松先生にはいろいろ頼みごとをしてお世話になってるから、これくらい…って、校長先生は言ってました。」
遼太郎がそう言うと、みのりはフフフ…と声をたてて笑った。
「校長先生とそんなことまで話したの?校長先生から古文書の解読を頼まれて、それをちょっとやっただけなのに…。」
生徒にとって、先生同士のやり取りというのは、やはり未知の領域だ。
みのりの説明を聞いて、遼太郎は気になっていたことが一つ解決できた。
遼太郎の落ち着いた表情をしみじみと見て、みのりは安心したように息を抜いた。
「ずいぶん冷えてきたね。狩野くん、入試前の大事な体だから、風邪ひいちゃいけないし。もう帰ったほうがいいね。お守り、学校で渡せたらよかったんだけど、呼び出しちゃってホントごめんね。」