Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
みのりにそう切り出されて、遼太郎はとうとうこれで帰らなければならない…と、がっかりした。
みのりと一緒にいるだけで、遼太郎の体の芯では暖かい火が燃えている。みのりは心配してくれてるのだろうが、風邪なんか引くはずがない。
しかし、消沈した気分で、遼太郎は頭を下げた。
「いえ、先生こそ、わざわざありがとうございます。」
「ううん、お礼は合格してからにしようか。」
みのりは首を横に振って、笑顔を向けてくれる。そして、遼太郎に向かって手を差し出した。
「いつもの調子で、頑張ってね。狩野くん。」
目を見開いた遼太郎は、息を呑んでみのりの片手を見つめる。
みのりから受け取ったジップ袋を片手に持ち直して、空いた手をそっとみのりの手に重ねた。
すると、ぎゅっとみのりに握られ、遼太郎の心臓は跳ね上がった。
軽く2、3度振られると、みのりは反対の手も添えて、両手で遼太郎の手を包み込んだ。しっかり握られるのと同時に、みのりは目を閉じて何か祈りのような言葉をつぶやいていた。
すぐ目の前で俯いて目を閉じているみのりの美しさと、右手を包むたおやかなみのりの両手の感触に、遼太郎は呼吸が止まり、もう気が遠くなりそうだった。