Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎の姿が宵闇に溶けていくのを見守って、みのりは上げていた片手を下した。
張りつめていた緊張が一気に解けて、震えが体を駆け上ってくる。遼太郎の前で自分の気持ちを押し隠し、いつもの通りを装うのは、とてつもない努力を要した。
初冬の宵は確かに冷えてはいるが、寒さのためだけではない震えを抑え込むように、みのりは両腕を抱え、気力を振り絞って車へと乗り込んだ。
遼太郎が考えたり笑ったりする仕草や、ラグビーで鍛えた男らしい容姿を見つめるだけで、1秒ごとに愛しさが募っていくのが分かる。
その愛おしさが重すぎて、心が今にも壊れてしまいそうだ。
それでなくても、いつもとは違う遼太郎の私服姿は、みのりの心に深く刻み込まれていた。遼太郎に触れたいという誘惑に勝てず、〝激励〟というかたちで手を握ってしまった。
ちょっと握手するだけと思っていたのに、手が触れ合い、遼太郎の骨っぽい指や硬い掌を感じた瞬間離したくなくなって、思わず両手でしっかりと握りしめてしまっていた。
溢れ出してしまいそうな想いを堪えるために、必死で遼太郎の成功を祈った。
触れたりすれば、もっと想いが募ってしまうのは分かっているのに、自分が止められなかった。