Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
――ダメよ…!狩野くんは、生徒だもの…。
みのりはきつく目を閉じ、何かを我慢するように車のハンドルを力いっぱい握った。
重い現実に、みのりの胸が突き上げられる。
遼太郎は石原と同様、好きになってはいけない相手だ。どんなに恋焦がれても、両想いになるなど当然望めない。
遠くからただの教師として見守ることが、みのりにとって唯一許されることだと、分かっている。
だからこそ、これ以上遼太郎と一緒にいる時間を増やしてはいけない。これ以上想いが募っては、もう隠しておけなくなる。
隠しておけなくなったら……。その時のことは、みのりにはとても怖くて想像さえできなかった。
でも、遼太郎はもうすぐ卒業する。
仮卒をするまでのあと2か月間、自分を押し殺して何とか乗り切れば、この想いも溢れ出さずにすむだろう。
遼太郎が卒業して会わなくなり、お互いが別々の生活を始めるようになれば、きっと切ない思い出の一つとしてみのりの胸に刻まれるだけのことだ。
だけど、それまでの間、どれだけ心は痛みを抱え続けなければならないのだろう。隠し通すために、どれだけの努力を要するのだろう。
心を細切れにされるようなこの切なさは、石原を想っていた頃に比するものではなかった。