Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 みのりにちょっと素っ気ない態度をとられたぐらいで動揺していたことが、遼太郎は情けなくなった。

 いつもみのりは、自分のことを考えてくれている。それは、このお守りと、それだけに止まらない一緒に渡されたこれらの物たちが物語っている。

 お守りを両手で包み込んで胸に当てると、かつてみのりに包み込まれた時のような感覚になった。


 もちろんそれは、みのりの生徒への思いやりがなせる業だ。自分を生徒の一人として、みのりが見ていることに、遼太郎は物足りなさを感じていた。

 だけどみのりは、すべての生徒に自分と同じようなことをしているわけではない。みのりにとって自分は、生徒の中で特別なんだと感じていた。

 同時に、みのりと一生寄り添ってずっと一緒にいるためには、生徒の中の特別ではダメだとも思っていた。


――生徒の一人じゃなく、たった一人になるためには、対象として見てもらえるように、…やっぱりいい男にならないと…。


 そのためには、今目の前にあることを一つ一つ成し遂げていくしかない。

 遼太郎は、みのりからもらった物たちをジップ袋に戻し、それを受験票や筆記具と共にリュックに入れて、東京に発つ準備を再開した。
 


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