Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
そもそも、澄子がみのりの境遇に共感できないのには、訳がある。
澄子はみのりよりも一つ年下で、今年29歳になるのだが、未だ一度も男性と付き合った経験がない。
異性と手も繋いだこともないのだから、みのりと石原の濃厚な関係は理解の範囲内にはないのだろう。経験がないが故に、恋愛に関して幻想を抱き、潔癖すぎるのかもしれない。
いずれにしても、澄子の彼氏いない歴28年という状況を何とか打開しようと、みのりは他の女友達といろいろ画策していた。
気分を変えるようにカフェラテを一口飲んでから、みのりは先ほど気になったことを持ち出した。
「さっきね、『みのりさんも恋患い…』って言ったけど、『…も』ってどういうこと!?もしかして澄ちゃん、好きな人できた?!」
身を乗り出して、澄子に迫ってみる。
「えっ?!…いや、…その、あの…」
と、口ごもっていた澄子だが、とうとう「うん…」と頷いた。
口まで持っていっていたカップをカチャンと置いて、みのりは目を見張った。そんなことは澄子と知り合ってから、ただの一度もなかった事実だった。
「本当に!?うわ、一歩前進だね!誰?私も知ってる人?」
まるで自分の事のように満面歓喜のみのりに、澄子は小さく頷く。