Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎はそう言われて、確かに二俣の思いつきにはありがたいと思った。
卒業までに、もうあまり時間がない。学校ではないところでみのりに会えることは、とても大事なことのように思えてきた。
ただそれが、焼肉屋というのは、あまりにもムードがないが。
「…わかったよ。じゃあ、早速今から特訓だな。」
みのりと同じように、遼太郎も二俣の攻勢に折れて溜め息をついた。
「……あっ、そうだ。」
と、その時、何かを思いついた遼太郎は、二俣の腕を振りほどいて、職員室の方へと走り出した。
「えっ!?遼ちゃん、特訓は?」
背後から二俣が叫ぶ。
「先に教室戻ってて!俺、先生にちょっと用事。」
遼太郎は走りながら振り向いて、同じように叫んだ。
考査前なので、職員室は生徒の入室が禁止されている。そのため、職員室の狭い入口付近には、出し忘れていた課題を提出しに来た者、考査に際して質問をしに来た者などでごった返していた。
みのりはその雑踏の中の生徒に引き留められながら、ちょうど職員室へ入ったところだった。
人ごみをかき分けて、遼太郎が職員室の入口に立ち、
「仲松先生!」
と呼んでみても、その声は群衆の声にかき消された。