Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
みのりは生徒から預かった課題プリントを他の先生に渡したり、生徒から頼まれて他の先生を呼び出すのに忙しく、遼太郎には気が付かなかった。
そうしているうちにみのりは、入口とは反対側の一年部にある自分の席へとたどり着き、やっと椅子へと腰を下ろせたようだった。
遼太郎はポケットに手を突っ込んで、中の物を確かめた。みのりに渡そうと思っていたもの。東京のお土産だった。
だが、これを渡すためだけに、みのりに再び席を立たすのは気が引けた。
遠く一年部の職員が座るところで、みのりが外出から戻ってきていた古庄に話しかけられ、それに笑って応えている。隣に座る古庄の方へ椅子を寄せて、何かを一緒に覗くような姿が遼太郎の目に映る。
キュッと唇を噛んだ時に、職員室に押し寄せた他の生徒に後ろから押されて、その場を譲った。
――3人とも80点。頑張るしかない。
今は少しでも、みのりと一緒にいられる時間を作らなければならない。そう悟った遼太郎は、衛藤と二俣の特訓を心に決めて、気合を入れながら教室へと戻った。