Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
そして、ここにも気合を入れている者がいた。それはラグビー部顧問の江口。彼は意を決して、みのりへ近づいていった。
一心不乱に考査問題を作成しているみのりは、しかめっ面でパソコンに向かっている。そのあまりに人を寄せ付けないオーラに気圧されて、江口は声をかけるのを躊躇した。
みのりが図説を手に取ってコピー機に向かったので、チャンスとばかりに追いかけたが、再び席に戻ってしまったので機を逸してしまう。
コロンとした体型の大きな江口が、普段はいない1年部付近にいるものだから、かなり目には付くのだが、みのりは一向に気が付かない。
「なんか江口先生、ねえさんに用があるんじゃない?」
古庄からそう言われて、みのりは給湯室付近から自分の様子をうかがう江口に気が付いた。
用を訊くついでに休憩を入れようと、コーヒーカップを持って給湯室へと席を立つ。
「江口先生、コーヒー淹れましょうか?」
みのりの方からそう声をかけると、江口はさも嬉しそうな顔をした。
江口は普段は体育教官室にいるので、職員室でコーヒーを飲むことなどほとんどない。逆にみのりも、「教官室にコーヒー飲みにおいで」と、いつも誘われてはいたが、日々の業務に忙殺されていて、そんな余裕はなかった。