Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「え、えっ、誰?古庄先生?前田先生?」
と、共通の知り合いの独身男性を次々に挙げていったが、澄子は首を横に振るばかりだ。
まさか、この澄子に限って既婚者に恋をするなんて、あり得ないだろう。
「あのね…….久我先生なの……」
この澄子の告白に、みのりは絶句した。
この久我という世界史の教師は、澄子よりも4つ年上で、離婚の経験があるらしい。その離婚の傷を今も引きずって、不眠症に悩まされているため、生活が荒れている。
「何で……?」
澄子の選択を肯定し応援したかったのだが、みのりの口を突いて出てきたのは、この言葉だった。
「私、ああいう枯れた感じの人が好みなの。」
澄子が恥ずかしそうに微笑む。
「枯れた感じって…」
またしても、みのりは言葉を途切れさせた。
久我の顔を覆う無精ヒゲが目に浮かんだ。シャツやズボンはいつもしわくちゃ。精気のない表情。
――あれを、「枯れた感じ」とは言わないでしょう……。
みのりは心中を読まれないように、無理に作り笑いをした。何とかして、澄子を応援したかった。
「とにかく、久我先生は独身には違いないから、望みはあるわね。」