Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 みのりのこの言葉に、みのりの境遇を読み取った澄子は、表情を翳らせた。
 少なくとも、久我は自由に恋愛が出来る立場にあるのだから、石原よりもずっと条件はいい。あの病んでいる久我の心を、恋愛に向かわせるのは難しいに違いないが。


「よし!作戦練ろう!まずは趣味よね。澄ちゃん、久我先生の趣味知ってる?」


 みのりはカップに残っていたカフェラテを飲み干し、楽しげに身を乗り出した。




 6月になり、生徒たちの衣替えも済んで、制服の白さが眩しくなった。一つ季節が進み、3年生はいよいよ受験に臨む体制になりつつある。


 恐れていた全県模試も終わり、みのりは緊張の採点に取りかかっていた。6月の全県模試は記述式なので、採点の後データのみを送ることになっている。

 一人一人の名前などは確認せずに、どんどん採点を進めていくのだが、○よりも×をする頻度が多いような気がしてくる。

 後は集計というところで、コーヒーを注いできて一息吐いた。


「仲松ねえさん、日本史はどうだった?」


 みのりをこう呼ぶのは、古庄だ。彼は1年の担任ながら、みのりと同じく、分割授業で3年の私立文系の地理を担当していた。



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