Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「個別指導じゃ、ずいぶん狩野くんを苛めちゃったからね。でもそれにめげずに、狩野くんが頑張ったからよ。」
「苛めちゃったって…。」
遼太郎は反復して、恥ずかしそうに肩をすくめた。
夏休みが始まったころ、あの渡り廊下で、みのりのシゴキに頭を抱えていた自分の姿が脳裏に浮かんだ。
喜びに満ちた柔和な微笑みをみのりは向けてくれ、それは遼太郎を包みこんだ。
落ち着かなげに、遼太郎はポケットに両手を突っ込むと、そこに忘れていたものを発見した。取り出してみると、ずっとポケットに入れていたせいか、少々くたびれている。
どうしようかと躊躇したが、遼太郎は意を決した。
「先生、これ。東京のお土産です。」
少しよれっとした小さな紙袋を、みのりは凝視した。そして、遼太郎へと目を移す。
「もらっていいの?ありがとう…!」
差し出された物を、大事そうに両手で受け取る。
「開けてみてもいい?」
そう言うみのりの顔は、少女のように輝いていた。それは遼太郎の心に深く刻まれ、かろうじて頷き返す。
「あら、ストラップね?これは何の…?」
「スカイスリーです。」
「えっ!?狩野くん、スカイツリーにも行ってきたの?」
驚いたようにみのりが反応したので、遼太郎は首を横に振った。