Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「今の携帯ストラップがもう切れそうになってたから、ちょうどよかったわ。ありがとね。」


 宙を見つめて妄想に耽っていた遼太郎を、みのりの言葉が遮った。ちょっと素っ気ない現実的なみのりの物言いは、ふわふわと柔らかい遼太郎の感覚を一瞬にして冷めさせた。

 少し硬い表情で、遼太郎はお礼の返答の代わりに頷く。


「そうだ。お礼と言っちゃなんだけど、これあげる。」


 みのりは、ジャケットのポケットに入れておいた飴玉を一つ取り出した。反射的に遼太郎はそれを手のひらに受け取る。


「それじゃ、部活頑張ってね。」


と、手を振りながら職員室へ戻っていくみのりを見送ってから、遼太郎は手のひらのレモン味の飴玉に目を移す。

 ふーっとため息をついてから、包みを破って飴玉を口に放り込んだ。

 舌の上で広がるその味は、遼太郎には少し酸っぱすぎた。



< 544 / 743 >

この作品をシェア

pagetop