Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「今の携帯ストラップがもう切れそうになってたから、ちょうどよかったわ。ありがとね。」
宙を見つめて妄想に耽っていた遼太郎を、みのりの言葉が遮った。ちょっと素っ気ない現実的なみのりの物言いは、ふわふわと柔らかい遼太郎の感覚を一瞬にして冷めさせた。
少し硬い表情で、遼太郎はお礼の返答の代わりに頷く。
「そうだ。お礼と言っちゃなんだけど、これあげる。」
みのりは、ジャケットのポケットに入れておいた飴玉を一つ取り出した。反射的に遼太郎はそれを手のひらに受け取る。
「それじゃ、部活頑張ってね。」
と、手を振りながら職員室へ戻っていくみのりを見送ってから、遼太郎は手のひらのレモン味の飴玉に目を移す。
ふーっとため息をついてから、包みを破って飴玉を口に放り込んだ。
舌の上で広がるその味は、遼太郎には少し酸っぱすぎた。