Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「先生も食べて下さい。」


 甲斐甲斐しくみのりの世話をやく遼太郎を、二俣はニヤニヤと含みのある顔で眺めている。

 みのりと遼太郎の二人が共有する世界では、こんな遼太郎は珍しくない。いつも遼太郎はみのりを気遣い、心配し過ぎるくらいだった。

 しかし、普段全くといっていいほど女っ気がない遼太郎を知っている二俣にとって、こんな遼太郎は新鮮であり面白くてたまらなかった。


「じゃあ、頂きます。」


 みのりはきちんと合掌すると、箸を持って肉をつまみ上げた。肉はサッとタレにくぐらされると、花びらのような愛らしいみのりの唇の間へと滑り込んだ。

 遼太郎の目には、その光景が何とも色っぽく映り、思わず唾を呑み込んだ。

 向かいにいる二俣も、同じことを感じているらしく、みのりの口元に目が釘付けになっているのが判る。
 衛藤は、空いた網に再び肉を並べるのに忙しい。


 遼太郎は咳払いをして、二俣の視線を牽制した。怪訝そうな遼太郎の顔に、二俣は「おっと」というふうに少しおどけて見せて、口を開いた。


「みのりちゃん。しっかり食べないともったいないぜ。食べ放題なんだから。」


 二俣は衛藤が並べた肉を落ち着きなく箸先でつつきながら、焼けるのを今かと待っている。


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