Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「それで、夜中に自分のアパートまで帰るのも億劫だったから、歓楽街に近い澄ちゃんのアパートに泊めてもらって、今日はここまで送ってもらったってわけ。」
みのりは遼太郎へとチラリと視線を向け、小さく笑った。
みのりに笑いかけられたにもかかわらず、遼太郎はそんな飲み会で、みのりが男性教師とどんな話をするのか、とても気になっていた。
特に地歴科には、妙にみのりに馴れ馴れしい(遼太郎が勝手にそう思っているだけだが)、古庄もいる。
大人のみのりには、自分の知らない世界がたくさんあることを思い知って、遼太郎は心がざわめいた。
思わず、目の前で転がる自転車の前輪を見つめて、溜め息が出てくる。
ゴチン!!
すごい音がして、とっさに遼太郎が目を上げると、歩道に立つ道路標識にみのりがぶつかっていた。
ぶつかった反動でみのりがのけ反って倒れそうになったので、遼太郎は自転車のハンドルを離してその腕を掴まえた。
ガッシャ――ン!
と、大きな音をたてて遼太郎の自転車が倒れる。
その音に驚いたみのりは、ようやく何が起こったのか把握したらしく、目を見張って遼太郎を見つめた。