Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「……ご、ごめん。狩野くん。ちょっとクラっときただけだから。月に一度の貧血みたい。」
「…月に一度?」
みのりの腕を握りしめたまま、遼太郎は眉間に皺を寄せた。
余計なことを言ってしまった…と思い、みのりはきまり悪そうに遼太郎の疑問符には答えなかった。
しかし、遼太郎はそれの意味するところを察して、ほのかに顔を赤らめた。
「それより、先生。〝ゴチン〟って、今すごい音がしましたよ。おでこ大丈夫ですか?」
腕を握っていない方の手で、みのりの前髪を寄せてぶつけた額を確認した瞬間、遼太郎は打撲以外の事態に気が付いた。
「先生!!……熱!熱が出てるじゃないですか!すごく熱いですよ!!」
どうりでさっきから、しんどそうなはずだ。
バレてしまったか…というふうに、みのりは肩をすくめて大きく息を吐いた。遼太郎に気取られないように、普段通りを装って懸命に会話を続けていたらしい。
「こんなに熱が出てて、歩くのだってしんどかったでしょう。…ちょっと、ここ。座ってください。」
そう言って、遼太郎はみのりを歩道脇にある腰高の花壇の縁石に座らせた。そして、倒れている自転車を立てて、花壇の側に寄せる。