Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「ちょっとしんどかったけど、さっきお店を出るまでは何ともなかったのよ。急に寒気がして…。」
暖かい日差しが燦々とみのりを包んでいるにも拘らず、しゃべる言葉の響きで、歯の根が合わず震えているのが判る。
遼太郎は自分のコートを脱いで、みのりの肩にかけた。
「…ありがとう。狩野くんは、寒くないの?」
寒気のあまり、思わずコートの襟を首元へ引き寄せながら、みのりは問うた。
「大丈夫です。この陽気ですから暑いくらいですよ。それより、先生。サンライズまで歩くのは無理ですよね?どうしますか?病院へ行きますか?」
「病院って言ったって、土曜日の午後だからね…。」
どこの病院も、もう閉まっているだろう。土曜の午後でも開いている救急病院へここからタクシーで行くのは、とてつもない料金がかかる。
「…こんなになっちゃったら、ここからタクシーに乗って、もう帰って寝るしかないわね。」
力なくつぶやくように言うみのりの顔を、遼太郎は覗き込みながら頷いた。
流しのタクシーを止めようと、自動車が行き交う往来に目を走らせるが、如何せん田舎町だ。なかなかタクシーなど走っていないし、走っていたとしても賃走中だ。