Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「携帯に芳野タクシーの電話番号が入ってるから…、そこに電話してくれる?」
みのりはそう言ってバックの中から携帯電話を取り出そうとするが、寒気で震えるのと高熱で力が入らず上手くいかない。
遼太郎は傍にしゃがんで、そっとみのりを介助して携帯電話を受け取った。それに、自分があげた東京土産のストラップが付いているのを認めて、むず痒いような気持ちになる。
遼太郎は、携帯の電話帳を開いて芳野タクシーを探す。「や行」の電話帳を検索するのだが、遼太郎の電話帳とは比べ物にならないほどたくさんの人が登録されていて、なかなか「芳野タクシー」にたどり着けない。
検索の最中、多くの男の名前が登録されていることに気が付いて、遼太郎は一瞬状況を忘れてしまった。
やっとのことで「芳野タクシー」を探し出し、気を取り直して電話をする。
「……すぐに来てくれるそうです。」
と言う遼太郎の言葉に違わずに、5分もせずにタクシーはやってきた。
ところが、立ち上がろうとしたみのりの足には、もう力が入らなかった。遼太郎はみのりの脇に手を差し入れて抱え上げて立たせると、タクシーまでそのまま一緒に歩いてその座席に座らせた。