Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「それじゃ、狩野くん。…あ、コート返さなきゃ…。」
みのりが弱々しく別れを告げてコートを脱ごうとしたところで、遼太郎は意を決したように素早く自転車の鍵をかけに行き、すぐに戻ってきた。
「俺、先生の家まで送っていきます。」
と、遼太郎はみのりの隣に乗り込むと、みのりが脱ぎかけていた自分のコートを再びその肩にかけなおし、そのまま震えるみのりの肩を寄せて体ごと抱え込んだ。
遼太郎の行動を否定する気力もなく、辛うじてみのりは運転手に行先を告げると、力なく頭を遼太郎の首根にもたれさせた。
甘い感覚が遼太郎には過ったが、みのりはそれどころではないらしく、ブルルッ…と体に悪寒がたびたび走り、歯の根をカチカチを鳴らして目を閉じている。
寒さに震えるみのりを、遼太郎は何とかしてあげたかった。本当ならばこの胸に抱きしめて、自分の体温で温めてあげたかった。