Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
22 アパートでの出来事
タクシーに乗って10分弱経ったところで、みのりが告げた所へとさしかかった。
「先生、南部中学まで来ましたけど、ここからどう行くんですか?」
タクシーの運転手の代わりに、遼太郎がみのりに尋ねる。
「右手の橋を渡って、左に曲がるとアパートが見えるからそこへ…。」
「かしこまりました。」
みのりの弱々しい声に、運転手が答える。
遼太郎が目を上げると、みのりの言った通りにアパートが見えた。街中の喧騒から離れた川沿いの静かなところだ。
みのりが財布から千円札を3枚ほど取り出して、遼太郎に渡す。
「…狩野くん、これ。自転車のある場所まで戻らないといけないでしょ。今日はお世話かけちゃって、ごめんね…。」
みのりはここで自分だけ降りて、このまま遼太郎はとんぼ返りさせる気だ。
――冗談じゃない……!
それではタクシー代を浪費するだけで、ここまで付き添ってきた意味がない。タクシーが止まると、遼太郎は運転手に表示されている料金を渡し、精算してもらった。
「男の子は、家に来させないようにしてたんだけど…。」
タクシーを降りて、遼太郎に支えられアパートの外階段を上りながら、みのりがつぶやいた。