Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 「男の子」というのは男子生徒のことで、異性の生徒を部屋に連れ込むのは、何かと問題視されることもあるのだろう。それの意味するところを解して、遼太郎は複雑な気持ちになった。


「でも、先生、こんな状態で…。放っておけないし…。」


 却ってみのりにとって、自分の行動は迷惑なのかもしれないと遼太郎は思ったが、このまま帰ってしまっては心配で仕方がなくて、居ても立ってもいられなくなるだろう。


 みのりがバッグから鍵を取り出し、鍵穴に差し込もうとするが、手が震えるのでうまくいかない。


「俺が開けます。」


 みのりは素直に遼太郎に鍵を渡すと、支えてくれているその腕に体を預けた。自分の体の制御が利かず、こうしていないと今にも崩れ落ちてしまいそうだった。


 遼太郎はみのりが体を預けてくれたのを左腕で感じ、その腕に力を込めると、自然に抱き寄せるかたちになった。
 みのりが自分の行動を肯定してくれているように感じて、少し安心する。胸にみのりの頭の重さ、首筋に髪の感触を覚えながら、遼太郎は鍵を回しドアを開けた。


 一歩中へ入った瞬間、いつもみのりから感じる匂いに包まれた。南向きの窓から明るい日差しが射し込んでいるせいか、部屋の中の空気はとても暖かかった。



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