Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 みのりがブーツを脱ぐ間も、その腰に腕を回して体を支え続けた。遼太郎自身も素早くスニーカーを脱ぐと、肩を抱いたまま奥へと進んだ。


 ここは、遼太郎にとって夢にまで見た特別な場所で、緊張して思わず呼吸が荒くなった。
 奥には二部屋あって、手前にはソファーやテーブルやチェストが置かれ、奥の南向きの窓がある部屋には机や本棚とベッドがある。


 遼太郎はみのりをベッドの脇まで連れていき、その肩から自分のモッズコートとみのりのショート丈のダッフルコートを取った。すると、みのりは、やっとここまで辿り着けたという感じで、力なくベッドへと座りこんだ。


「とりあえず、横になってください。」


 遼太郎は羽毛の掛布団とその下の綿毛布を持ち上げて、みのりを促した。みのりが頷いてそのまま体を横たえると、遼太郎はみのりの首のところまですっぽりと布団をかけた。


 これで一安心かと思ったが、枕に頭を預け、目を閉じているみのりの顔は青ざめて、体中ガタガタと震えている。


「先生、体温計ありますか?」


 みのりがうっすらと目を開ける。


「…うん。本棚に置いてある救急箱……木の箱があるからそれの中に…。」


 みのりの言うとおり、一見救急箱とは思わない箱を取り出して、遼太郎はその中から体温計を探し出した。


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