Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「体温、計ってみてください。」


と、それを渡すと、みのりはもぞもぞと脇の下にそれを挟んだ。


 遼太郎はみのりの枕元で胡坐で座り、黙ってしばらく待った。

 ピピピピ…、ピピピピ…。

 電子音が鳴り、みのりが体温計を取り出す。自分で数字を見る気力もないらしく、そのまま遼太郎へと手渡した。


「…うっ!!?先生!38度8分だって!!すごい熱です!」


 思わず遼太郎は手を伸ばして、みのりの額に手を当てた。

 触れた瞬間、チカッと手のひらから熱が伝わってくる。この熱さにもかかわらず、依然としてみのりは震えていた。


「…そんな数字を聞いちゃうと、もっとしんどくなっちゃうわ…。…生理で貧血気味の時にこんな風邪ひくなんて、ダブルパンチでホント最悪よ…。」


 みのりは先ほどは隠そうとした生理のことを、遼太郎の硬くて大きな手を額に感じながら、今度は正直に打ち明けた。


――ただの風邪ならいいけど…。


 みのりの体の震動を手のひらに受け、遼太郎はその蒼白の顔を見つめた。
 そして、救急箱の中に解熱剤があったことを思い出す。


「先生。とりあえず熱を下げましょう。」


 玄関を入った所の台所からグラスに水を汲んできて、解熱剤をみのりに差し出した。それは、遼太郎が受験の時に、みのりから持たされた薬と同じものだ。


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