Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 億劫そうにみのりは上半身を起こして、遼太郎に介助されながら薬を飲んだ。
 遼太郎がもう一度、布団を掛けなおしてあげると、みのりは深く息を吐いて目を閉じた。


 これで少しでも熱が下がると、少しは楽になるはずだ。
 遼太郎は再び枕もとで胡坐を組んで、辛うじて布団から出されているみのりの顔を見つめた。


「狩野くん…。」


 眠ってしまったかと思っていたみのりが、つぶやくように呼んだ。


「はい。」


 遼太郎が座ったままにじり寄って覗き込むと、みのりも目を開けて虚ろな視線を遼太郎に向けた。


「いてくれて助かったわ…。…ありがとう…。」


「…いえ。」


―― 一緒にいたかったんです……。


 遼太郎の心の中ではそう続けていたが、声には出せなかった。

 遼太郎の心に、痺れるような甘い蜜があふれてくる。


「一緒にいてくれる人がいるって、こんなにも心強いものなのね…。」


 自分がいることで、みのりに心強いと思ってもらえている……。遼太郎はそれだけで、胸がいっぱいになった。

 同時にその言葉は、家族のもとを離れてからずっとこれまで、みのりが一人で生きてきたことを裏付けるものだった。


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