Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
30分ほどしてから、もぞもぞとみのりが動き始めた。うなされているように、「うーん…」と口から言葉がこぼれ出る。
「先生、どうしました?」
「……。」
言葉にならないけれど、みのりの唇が動いた。先ほどよりも血色が良いようだ。
「え…?」
遼太郎は覆い被さるように耳を寄せた。
「……暑い。暑いの……。」
みのりは目を閉じたまま、無意識に布団を剥いだ。
薬が効いてきたのだろうか、先ほどまで悪寒に震えていたみのりは、頬を紅潮させ、額には汗が粒となって浮かんでいる。
みのりは夢うつつで、じっとりと濡れた額を不快そうに手の甲で拭った。
普段、介抱されることはあっても、した経験のほとんどない遼太郎は、途方にくれた。
とりあえず、みのりの汗を拭い取るための物を探し始める。
部活の時、数枚は準備するタオルも、今日は持っていない。ハンカチなんて、気のきいた物も持ち合わせていない。みのりはどこかにタオルを仕舞っているのだろうが、家捜しするわけにもいかない。
その時、先ほどタクシーを呼ぶのに携帯電話を取り出した時、みのりのバッグの中にタオルハンカチが入っていたことを思い出した。