Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
けれども、そんな自分の中に渦巻く悶々とした感覚を振り払うように、ギュッと目を瞑ってベッドへ手をつき立ち上がった。
このままみのりの傍にいるのは、まるで拷問だ。
出しっぱなしだった救急箱を持ち上げると、本棚へと戻す。ふと本棚に並ぶ本の数々を見て、みのりの日常に思いを馳せた。
「近世民衆史の研究」と題された無味乾燥な外函(そとばこ)に入った分厚い本を手に取ってみる。函から出してみると、ところどころに付箋が貼られ、かつてみのりがそれをじっくりと読み込んでいたことが窺われた。
ページをめくってみても、もちろん遼太郎には何のことを書いているのか、全然解らない。
一生懸命考査の勉強をして満点を取っても、自分の実力など所詮こんなものなのだ。というより、高校の勉強など学問と呼べるものではないのだろう。
函に本を戻す時に、その価格を見て遼太郎は仰天した 。
――い、1万5千円…!?
下の段に置かれている「有識故実大辞典」という大きな辞典を見てみると、3万円とあった。
――この本棚の本、全部でいくらしたんだろう…。
本棚の本を見渡して、遼太郎は目を回した。そして、その中の一冊に目を止める。